【書評(読書感想文)】豊田章男が愛したテストドライバー

コロナ禍でも黒字を確保し、
飛ぶ鳥を落とす勢いのトヨタ。

豊田章男社長と、
伝説のテストドライバー成瀬氏に
迫った本書を読んで、考えた。

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成瀬氏のトヨタ入社以来のヒストリーを追うことで
トヨタ自動車についての歴史を追体験することができる。

今や、商売的に盤石で、
ハイブリッドカーでの環境対応、
レクサスでの高級路線、
一方で86、GRスープラ、GRヤリスなど
クルマ好きに刺さるクルマもリリースし、
鉄壁に見えるトヨタだが、
そこに至るまではいろんな時代があったということが
よく分かる。

株主総会でも章男社長がよく言っている
「いいクルマつくろう」をどうして言い出したのか、
どういう意味があるのか、ということが
本書を読んでよく分かった。

僕は以前、豊田市にいたのだが、
そのころのトヨタは、クルマ好きの匂いがあまりせず、
本書にあるように、銀行みたいな会社だった。
算段を弾いて、これをこうしてこうすれば
これだけ儲かる、みたいなクルマ造りをしているように
見えていたし、本書でも中の人の言葉としてそういう
ことが出てくる。

その状況を変えたいと思っていたのが
成瀬氏であり、(現在の)章男社長だということ。

その状況を変えるための
「いいクルマつくろう」
という言葉だったんだ、と理解できた。

とはいえ、章男社長が、社長になる前の
トヨタのムードでは
章男バッシングが激しかったとあり、
章男社長も株主総会で自ら
「お叱りを受けてばかり」と漏らしていたことがあるが、
レースやスポーツカーが、
クルマ好きお坊ちゃんの道楽に思えて
相当、風当たりがキツかったんだろうな、、と分かる。

そういった社内の声に対して、
成瀬氏の
「クルマ屋が、クルマに乗って何が悪いんだ」ってのは
清々しい一撃。

日本のレースチームが、
レースの前は徹夜でメカニックが作業しているのに対し、
ヨーロッパのチームは定時で上がってしまう。
それに対し、日本人が
「そんなことじゃ勝てないぞ」
と向こうのディレクターに言うと
「徹夜だって? そんなんじゃメカニックはだれもついてこない」
という返事だった、というのは
日本と欧州の文化、仕事観の違いが出てるなあと思う。
働き方改革がやっと始まった日本、
はるか以前から意識が違うヨーロッパ、を
感じた。

本の中には、成瀬氏が、
単身赴任や出張、残業続きで
妻や息子たちからは疎まれ、
家庭には居場所がない、
まさに昭和のモーレツ社員親父ぶりも
描かれている。

後半は、LFAについての話。
LFAって、まさに成瀬氏と豊田章男の執念から
生み出されたクルマなんだと初めて、理解できた。

途中から、LFA開発の話に飯田章も加わる。
彼は、一味違うというか、知性を感じていたのだが、
獣医学部卒業なんだね、、、
確か、菰田潔氏もそうだったよね。
異色の経歴だ、、、
すごい人ってのは何やってもすごいんだな。

飯田章が、ニュルでLFAをテストしている時の
様子は、ゾクゾクきた。
初めは、トヨタはニュルでよそ者というか
本当に小さい存在だったのだが、
何十年かして、LFAを走らせる頃には
ドイツ勢から、畏敬の念を持って見られる存在に
なっている様子が、僕も感無量だった。

この本を通して、また現在のトヨタの様子から、
トヨタのような巨大企業でも、
トップが変わると確実に会社が変わるということに
驚いた。

また、この本を読んで、LFAがものすごく欲しくなった。
当時、LFAの裏側にあるこのようなクルマ好きたち、
LFAを実現させるための男たちのストーリーを知っていたら、
田んぼを売ってでもLFAを購入したのになあ。
(田んぼ持ってないけど)

今ではトヨタが大好きになった僕は、
トヨタ車を買ってトヨタを応援したいなと思っている。

僕が今、気になっているトヨタ車は
・ベースグレードでスライドドアが手動のアルファード、
・もう一回復刻してほしいランクル70(MT)、
・そしてGRヤリス。

惜しくも、早くに亡くなられた成瀬氏だが、
その後、章男社長時代のトヨタは、
成瀬氏が思い描いていた自動車会社の姿に
近づいているのではないんじゃないかな、と思った。

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