【ショートショート】高校生の残業代


「働き方改革」のニュースを見て、
大人には「残業代」が支払われることに気がついた。

では、高校生の自分にも残業代が
払われてもいいのではないか、と思った。

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進学校に通う私は、
朝7時半から補習に参加している。
その後、朝の会、授業を受ける。
授業の終了は15時半。

そのあとは、部活動で18時半ごろまで活動し、
19時には学校を出る。

サラリーマンである父は、9時〜17時が勤務時間で
遅くなると残業代が出ているようだった。

お父さんの会社よりも1時間半も早く学校へ行き、
仕事が終わった時間より2時間も長く学校にいることになる。

また、土日も、部活動の練習試合や模試や土曜学習会などで
なんだかんだと平均して、毎週10時間ぐらいは学校へ行っている。

ということは、父の会社の勤務時間を基準としたら、
私の定時外の「残業」は
平日朝1時間半、帰りに2時間、土日に10時間となる。
計算すると、週に27.5時間も残業している。
月にすると合計110時間で、
なんと月に80時間とされている
過労死ラインをはるかに超えている。

残業代の計算はよく分からなかったので、
最低賃金の時給926円で計算すると、
私の場合は、月に110時間×926円で
10万1860円、残業代がもらえるはずだった。

さて、この10万円を誰に請求するかだが、
お父さんやお母さんに言うのは違う気がする。

そこで、担任の先生に言ってみたら

「バカなことを言うな」

と取り合ってもらえなかった。

そこで、始業式などで話が面白いなと思っていた
校長先生に相談しようと思った。

校長室へ行くのは緊張したけど、
思い切って行ってみた。

校長先生は、思いの外やさしく、
真剣に話を聞いてくれた。

「で、私の残業代はどうなりますか?」

重々しい表情で校長先生は、こう答えた。

「先生たちにも残業代は払っていないんだよ」


この文章はフィクションです。
私と関係がある、あるいは関係のない、
組織や団体、個人の意見を示すものではありません。

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