【走行小説】 新年にTIMEで走りぞめ


正月休みでなまった体を鍛え直すため、
部屋でホコリをかぶるままになっていた愛車・TIME・IZONを
外へ引っ張り出す。

愛車といっても、
ここのところの多忙を言い訳に
最近は全然乗っていない。

通勤用のブロンプトンには乗っているが、
TIMEに最後に乗ったのは
半年前くらいか?
ごめんよ、TIME。

タイヤの空気も抜けちゃってるので、
キコキコとまずは空気を入れる。

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ブレーキ周りを点検する。
よし、タイヤの空気さえ
入れれば大丈夫そうだ。

部屋から玄関の外へTIMEを運ぶ。
それにしてもこの異次元の軽さは、
持つだけでニンマリと表情が緩んでしまう。
見た目と実際の軽さに
ギャップがあるというところが
意表をついていていい。

手袋をはめ、ヘルメットをつけて走り出す。

ペダルの最初のひと踏みから、剛性感を感じる。
戦闘機が、カタパルトから発進した時のような高揚感。

ブロンプトンとは、別次元の軽さ、剛性、速さ。

そして、走っている時の新幹線のようなヒューっという風切り音。

カーボンホイールに削り取って止めているかのような
ブレーキの音。

指先で、カンパニョーロ・コーラスでギアを操作すると
これまたこの上なく気持ちの良い操作感。
パシッ、パシーッと変速が決まるのが
なんとも言えない。

コンポに関しては、
レコード、スーパーレコードという選択肢もあったが、
僕はあえてコーラスにした。

というのも、ヨーロッパでガチに走っている感じの
ロードバイクが駐輪しているのを見ると、そのコンポは
実はほとんどがSORAとか106。
本当にたまにアルテグラを見かける程度。

デュラエースとか、ましてや
カンパニョーロなんて全然見かけない。
そういうロードバイクたちが、
週末の朝などサイクルジャージ姿で
編隊を組んでものすごいスピードで走っている。

そのカッコ良さを見ているので、
僕なんぞの貧脚で
レコードなんて、おこがましいな、、、
という気持ちが出て
あえてのコーラスという選択をした。
まあ、それを突き詰めていうなら、
フレームのTIMEというのも
おこがましいのだが。

久しぶりにTIMEで走っている。
ルートは、ブロンプトンで走っている
いつもの通勤路にした。

正月休み中の朝ということでクルマが
あまり走っておらず、気持ちがいい。

いつもブロンプトンで走ると
通勤途中の、とあるポイントまでのタイムは、
13〜15分。

そのポイントまでTIMEで全力で駆け抜けて
手元のアップルウオッチでタイムを見ると、
なんと9分切り。

速い。

見晴らしのいいところで休憩する。
初めてハワイへいった時に当地のスタバで
購入したタンブラーで水を飲む。
日本でスタバへいく時に、このマイタンブラーを
持参していくと、割引サービスが受けられるという
特典のほかに、店員さんからかなりの確率で
「わー、ハワイのタンブラーですね!」と言ってもらえるのが
なんともうれしい。

同様のことは、僕が高校生の時に作った
銀行のキャッシュカードでも起きたことがある。
最近は、銀行の有人窓口へいくことはほとんどないし、
僕がキャッシュカードを作った時から銀行は合併を繰り返し、
今では何度も行名が変わっている。

いまだ、僕の高校生の時の行名が
記されたそのキャッシュカード、
何かの拍子に、行員の方の目に触れた際に
「長きにわたってお引き立ていただき、ありがとうございます」
と言われたことがある。

さて、TIMEの良さは、
ゆっくり流している時の、まるで地上から
浮いているかのような浮遊感、
スーッと低空飛行しているかのような
上質な乗り心地。

これが、ひとたびスイッチが入って
本気でペダルを踏み込んだ瞬間、
戦闘モードに入り、まるで戦闘機のごとく
マシンと僕が一体となって猛然と加速する。

スイッチが入る、というのは何もレースに出たり、
他のロードバイクと競争する必要はなくて、
例えば、前方の信号が青のうちに通過しようと
思ってダッシュし始めるだけで良い。

途端に、TIMEはそれまでの巡航での
高級セダンのような乗り心地から
ジェットファイターのような狂気の加速を見せる。

ペダルのひと踏み、ひと踏みがクランクからギア、タイヤへ
確実に伝わる感触がある。
そして、カンパ・コーラスのまるで
F1のパドルスイッチのような、指先を少し動かすだけで
パシッと決まる変速。

走りの快感という点では、このマシンはどんなスポーツカーよりも
上かもしれない、と思う。

そして、TIMEは、もしかしたらクルマに
ついていけるんじゃないかっと
思うところがある。
クルマに伍して走れるというか。
マビックのスピードメーターをふと見ると、
時速40km以上出て
前のクルマについていっている瞬間がある。

さて、軽く汗をかくほどTIMEにライディングをし、
自宅へ向かう。
途中、大学の敷地内を通る。
正月でも、若い人たちが歩いている。
だんだん自宅が近くこの道はある程度のスピードで流していると、
ツール・ド・フランスで言うと最後のシャンゼリゼ通りでの
ビクトリーランのような気持ちになる。

帰り道は、往路よりも早く感じる。
人生も、折り返し地点を過ぎると速く感じるのかな、とも
思うが、人生は折り返し地点をすぎて元に
戻っていくのではなくて、
ずっと一方通行、前へ進むのみだから、
往路、復路という考え方とは違うかな、とか
そんなことを考えながら走る。

さて、自宅に到着する。
アップルウオッチのアクティビティアプリの数値をチェックする。
ミシュランのタイヤの汚れをぞうきんで拭き取り
TIMEに「楽しい時間をありがとな」と話しかけつつ
部屋へ持ち上げる。

TIMEと一走りしてくると、
僕の体の中がとてもクリアになり、
すっかりと爽快感でいっぱいになる。
走るって、本当に気持ちがいい。

僕は、今年も、
いろいろな道を、
いろいろな乗り物で
走っていきたい。

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