キーをシリンダーに差し、左手を結構抵抗のあるのに抗うようにググッと回し、
クランキングがして、クククッ ジャー〜ンってエンジンがかかる瞬間から、
ポルシェマジックにかかってしまう。
いや、もうキーでガチャっとドアを開錠する瞬間から
ニヤニヤが止まらない。この先の素晴らしい運転体験が
想像できてしまうから。
ポルシェってそんなクルマ。
右手でギアをドクっと左上の1速に入れ、
左足でクラッチペダルをそろそろと上げると
クククッとクルマが動き出す。
クラッチが完全につながったところで
右足でオルガンペダルを踏み込むと、
明らかに他のクルマと違う、もちろん速いんだけど、
速いだけでなくて、スケートボードに乗って
平行移動しているかのような、スーーっと、
スターウォーズに出てくるランドスピーダー(宙を浮いてる
ホバー的な乗り物)みたいな感じで
走っていく。
なんとも言えず、気持ちがいい。
そして、空いた道で、少しガスペダルを深めに踏み込んでみると
リアをグンっと、大袈裟ではないけれど、
でも運転者はクルマの姿勢が変わったのを明確に感じ取れるくらい
ためをつくって、ポルシェは
ミレニアム・ファルコン号がハイパースペースへジャンプするかのような、
そしてその時にR2-D2が「「ギャー〜」って絶叫するような
エンジン音を奏でてロケットのように加速する。
これを味わると、ポルシェはやめられなくなる。
20年間乗っても、全く飽きない。
今でも、クルマに乗るときのキーでのドアのアンロックの瞬間から、
もっと言えば、「今日はポルシェに乗れる日だ」と朝思った瞬間から
あのポルシェの走り、感触、優雅な身のこなしが脳裏に浮かんで
ニンマリしてしまう。
ポルシェはまるで麻薬みたいなものだ
(麻薬を経験したことはないんだけど、、、)
最新のポルシェは、最新鋭戦闘機のようにカッコいいし、超絶な
高性能。
そして、古いポルシェは、逆にSL機関車や先の大戦時の
プロペラの戦闘機たちのように、その存在感が「重い」。
圧倒的な迫力のある機械というか、オーラが厚い。
新しくても、古くても、魅力がぎっちりと充満している感じがし、
そしてどのポルシェに乗っても、しっかりと、濃厚に「ポルシェ」している。
この先、運転を止める時まで、ポルシェは僕とずっと一緒にいるだろうな、という
確信がある。
そういった、「ポルシェヘッド」な人間のために、
ポルシェはEV化への対応を進めると同時に、
eフューエルを開発し、ポルシェ自身が今までに作り出してきた
傑作たちを21世紀でも走り続けることができるように
尽力しているのだと思う。
ポルシェのない人生は無理だ。