1970年代の亡霊(小説風)

「スタグフレーション、、、」

研究室のMacの前でコーヒーのカップを手にした
稀崎佳輔は、1970年代の亡霊のようなこの単語が
頭に浮かんだ。

スタフグレーション、
遠い昔の生徒時代、
社会科の授業で、インフレ、デフレとともに
スタフグレーションという言葉を聞いたときに、
不景気なのに物価が上がるなんて、そんなバカなことが
あるか、と思った。

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それが、令和の時代に起きているのを
目の当たりにしている。

稀崎が地元に帰った折に実家の近くの水田が
埋め立てられ、
建売が建築されていたのを見かけたのが数ヶ月前。

特に注目していたわけではないが、
ふと思い出し、不動産関係のサイトにキーワードを入れて
検索してみたら、件の物件がヒットした。

ロケーション、敷地面積、住宅会社などから
2500〜3000万円ぐらいだろうと当たりをつけていたその
物件に掲げられたいた価格は、しかし「4300万」だった、、、

2000万円台前半だったら、買ってもいいかと思っていたのだが、
まさか4000万円超えの値付けがされるとは。

稀崎は、古いポルシェも探している。
検索サイト「カーレーダー」に、
「空冷」「MT」などの検索キィを設定し、
条件に合致する車両が市場に出てくると
自動的にメールで知らせが来るように設定してある。

そこに出てくる車両の相場は、この2年の間に
明確に上昇していた。

不動産についても、ウッドショックや職人不足で
高くなった、以前と比べて3〜4割も上がった、という
話は耳に入ってきてはいたが、
実例をこのように目にすると、身へのめりこみ方が違う。

記録的に急速な円安もあり、物価はこのところ
どんどん上昇しているが、
稀崎含め、周りで給与がアップしたという話は聞かない。

不況にも関わらず物価が上昇する、
スタグフレーション。

1970年代のオイルショック時に起きたと歴史の教科書には
出ているが、それがまさに令和の日本に出現するとは、、、

こういうときに、社会や政府になんとかしてくれ、と言ったところで
事態が改善する見込みはほぼない。

稀崎はコーヒーカップをデスクに置き、
図書館で借りてきた書籍「スノーボール」を手に取った。

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